ノルウェーのMagnus August Høiberg(Cashmere Cat)の2012年のデビュー作。音楽史家は「おそらく最初の本当のフューチャーベースの録音」と位置づけています。9
Høibergは2009年まで、DJの世界大会DMCにノルウェー代表の決勝進出者として出ていたターンテーブル奏者でした。17 Lana Del Reyや2 Chainzの曲の型破りなリミックスで注目を集め、ポップスのプロデューサーBenny Blancoに招かれてロサンゼルスへ移ります。17 批評は「Mirror Maru」を「後に有名になる美学を一作で形にした」と振り返り、「彼の曲には大きなドロップがない。むしろ爆発しそうな所で内側に向く」と特徴を書いています。17 この曲はゲーム『グランド・セフト・オートV』のゲーム内ラジオの曲目にも入っています。18,17
Cashmere Cat『Mirror Maru』(公式の音源)
2-3Flume『Skin』(2016年)と「Never Be Like You」
2016年2月、カナダの歌手Kaiを迎えた「Never Be Like You」がオーストラリアで1位になり、Flumeにとって初めてのチャート1位の曲になりました。11 続くアルバム『Skin』は2017年のグラミー賞で最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム賞を受賞しています。11,19
「Never Be Like You」は同じグラミー賞で最優秀ダンス・レコーディング部門の候補にもなり、アメリカのチャートでトップ20に入りました。11,19 2017年1月には、オーストラリアの公共ラジオTriple Jのリスナー投票「Hottest 100 of 2016」で1位になり、投票数は220万票で、それまでで最多でした。11 音楽ブログの書き手は、この曲を「多くの人はジャンルの名前など気にしていないだろうが」と前置きしてフューチャーベースの例に挙げています。8 本人はレコーディング・アカデミーの公式ページで「とてもユニークな質感と音を作ることが、自分が音楽で愛していること」と語っています。19
Flume『Never Be Like You』
2-4Wave Racer「Rock U Tonite」(2013年)
シドニーのTom Purcell(Wave Racer、1992年生まれ)の最初のシングルは、「Rock U Tonite」と「Stoopid」の2曲入りで2013年に出ました。20
2014年:Lido「I Love You」、Ujico(氏家慶太郎)「Nyan Nyan Angel」。9 RL Grimeのアルバム『Void』もこの年で、解説は彼を先駆者の一人に数えています。4
2015年:Mura Masa「Lovesick」、シカゴのデュオLouis the Child「It's Strange」、Major LazerとDJ Snake「Lean On」。9 音楽ブログは、Mura Masaのアルバム『Soundtrack To A Death』(2015年)の「Lotus Eater」を個人的な基準点に挙げています。8
2016年:Martin GarrixとBebe Rexha「In the Name of Love」、オランダのSan Holo「Light」、Marshmello「Alone」とアルバム『Joytime』、The Chainsmokers「Closer」。9,4 シンセメーカーの解説は「Light」を、EDMの巨大なスーパーソウの演出をフューチャーベースの枠に当てはめた曲と書いています。6
2017年以降:Louis the Child「Love is Alive」(2017年)は、ドラムをさらに間引いてメロディを重ねた例として挙げられています。6 シカゴのDJ、Illenium(Nicholas D. Miller)は、The ChainsmokersやFlumeの曲のリミックスで自分のヒットを作りました。3,13
The ChainsmokersがHalseyを迎えた「Closer」は2016年に12週にわたってアメリカのチャートの1位にとどまり、「ジャンルがポップスへ渡れる可能性を証明した」とシンセメーカーの解説は書いています。6
この曲の共作者には、Louis the ChildのFrederic Kennettが入っています。6 2012年に組んだこのニューヨークのデュオは、「Roses」(2015年)、「Closer」(2016年)、「Something Just Like This」(2017年、Coldplayと)と大きなヒットを続け、Flumeの最初のヒットを超える商業的な成功を収めた、と複数の解説にあります。4,3,13 百科事典は2016年を「ブレイクした年」とし、2010年代の半ばにイギリス、アメリカ、日本、中国、韓国、オーストラリアで人気になったと書いています。1 音楽ブログは、歌の入った曲が増え、ポップスやヒップホップの有名な歌い手が参加したことを成功の主な理由と見ています。8
2017年8月のPerfumeのシングル「If you wanna」は、EDM、特にフューチャーベースを大胆に取り入れて話題になり、2018年のアルバム『Future Pop』はオリコンの週間アルバムランキングで初登場1位を取りました。12,21
音楽メディアの分析は、この曲の大胆さは「サウンドの特徴よりも、曲の構成に関わる」と書いています。PerfumeはそれまでサウンドではEDMを取り入れつつ、ビルドアップからドロップへというEDMの構成はほとんど採らなかった。J-POPでいちばん盛り上がるサビは音数が増えてリッチになるのに対し、EDMのドロップでは音数が大胆に減らされて個々の音の強度で盛り上がりを作るため、両者はすれ違ってきた、という整理です。12 同じ記事は、中田ヤスタカのサウンドを「時代の潮流を巧みに取り入れつつもJ-POPとしての親しみやすさを維持するバランス感覚」と評しています。12 2017年の記事は、ほかにw-inds.の橘慶太「Time Has Gone」、DEAN FUJIOKA「Let it snow!」を、J-POPがフューチャーベースの要素を取り入れた例として挙げています。21
2019年、FlumeはSophie、JPEGMafia、Slowthaiらと組んだ17曲のミックステープ『Hi This Is Flume』を出し、翌年のグラミー賞で同じ部門の2度目の候補になりました。11 百科事典の彼のジャンル欄には、フューチャーベースと並んで「実験的」「ハイパーポップ」が書かれています。11