トラップとは

米国南部アトランタのスラングから名前がついた音楽。長く伸びる808の低音、細かく刻むハイハット、ゆっくり重いスネアは、どう作られ、どこまで広がったのか。資料に書いてある事だけを、出典つきでたどります。

ジャンル解説ラジオ
聴きながら読む話 18:50・合間に曲 5 本

話は 2 人の掛け合いの解説です。曲の紹介の直後に、その曲の公式動画をこのページが流し、終わると話に戻ります。章や曲の札を押すと、そこから聴けます。

解説は、集めた資料(記事・論文)を元に AI(NotebookLM)が作った音声です。資料に無い事を言っている所があれば、下の記事と出典を優先してください。曲の音はこのページには置かず、YouTube の公式動画をそのまま流します。

ラジオで流れる 5 曲曲は、集めた資料に名前が多く出た順。公式の動画がある物だけ

1. Migos『Versace』
2. Migos『Bad And Boujee』
3. Waka Flocka Flame『Hard in da Paint』
4. Fetty Wap『Trap Queen』
5. Cardi B『Bodak Yellow』

曲の選び方:資料に名前が多く出る順。好みで選ばず、資料の中で何本に名前が出たかで決めています。

この資料の読み方

「トラップ」という言葉は、もともと音楽のジャンル名ではなく、アトランタの街にあった場所を指すスラングでした。この資料は、言葉の由来、前の時代の音、人と代表曲、DTMでの音の作り方、広がりの順にたどります。出典の番号は文の終わりに付けました。音の良し悪しの判断は書いていません。

トラップとは街の言葉と、音の骨組み

0-1街の場所から始まった言葉

「トラップ」は音楽の用語ではなく、アトランタで、違法な薬物を作って売る家を指したスラングでした。1,2,3

その家は「トラップハウス」と呼ばれ、貧しい地区にあることが多かったとされます。1,2 「トラップ」は、そうした荒れた地区の場所そのものを指す言い方でもありました。2 由来には説があり、出入口が1つしかない行き止まりの道(袋小路)がアトランタに多いから、という見方もあります。2

この名前にはもう1つの意味があります。その暮らしに「とらわれる」こと、つまり社会の端で抜け出す道が少ない感覚です。1,2 アトランタの音楽記者Maurice Garlandは、この言葉を1996年か97年ごろから耳にしたと話しています。2 「I'm trapping」は「何かを確保している」という意味にもなる、と説明しています。2

音楽では、1995年のGoodie Mobの曲「Thought Process」が、歌詞に「trap」が出る早い例としてよく挙げられます。1,2,4 メンバーのKhujoが「トラップの中」での暮らしに触れています。4 ただし、これが最初かどうかは決着していません。1 OutKastもこの言葉を広めましたが、この2組は今のトラップのアーティストとは見なされていません。2

Complex誌のDavid Drakeは、2000年代の初めの「trap」はジャンルではなく「本当にある場所」だった、と書きました。3 その場所について作られた音楽が、あとからそう呼ばれるようになった、という整理です。3 そのころの「トラップ」は、アトランタの薬物の世界を歌うラッパーを指すことが多い言葉でした。2 今のトラップを決めているのは、あとから目立ってきた独特の音づくりだ、と説明されています。2

0-2音の骨組み:808と速いハイハット

トラップの音の核は、長く伸びる808の低音、細かく刻むハイハット、ゆっくり重く落ちるスネアの3つです。1,5

「808」は、ローランド社のドラムマシン(ドラムの音を鳴らす電子楽器)「TR-808」の名前から来た言葉です。2,1 TR-808は1980年に出た機械で、音はすべてアナログでした。6 1983年に売れ行きの悪さから作られなくなりましたが、その後、エレクトロやヒップホップの中心の機材になりました。6

トラップの「808」は、キックの音を長く伸ばし、音の高さを付けた低音を指します。3,5 とても低いので、サブベースとも呼ばれます。5,1

ハイハット(細かいリズムを刻む金属的な打楽器の音)は、1拍を細かく割り、16分音符、32分音符、さらに速い連打(ロール)に変わります。1

全体の雰囲気は、暗い短調(マイナーキー)で、映画のような響きです。1 シンセサイザーで作った弦楽器、金管、木管、鍵盤の音を、映画音楽のように使うと説明されています。3

0-3従来のヒップホップと、何が違ったか

大きな違いは、速いテンポなのに体感は半分になる「ハーフタイム」と、声が入る広い隙間です。1

テンポは、1分間の拍の数で表すBPMで、140前後の速さが典型です。1,3 資料によって幅があり、130〜150のもの、130〜160のもの、Wikipediaの100〜176などがあります。4,7,8,3

それでも、スネアを各小節の3拍目に1回だけ置くので、体感はテンポの半分、およそ70 BPMの重いノリになります。5,1,7 ポップスでは2拍目と4拍目にスネアが入るのがふつうですが、トラップでは3拍目に感じるのが典型とされます。9,10 BeatsToRapOnの記事の表だけは、スネアを2拍目と4拍目と書いています。4

この広い隙間に、ラッパーは1拍を3つに分けて言葉を入れる「3連符フロー」を使います。1 3連符のラップは、1970年代からあると書く資料と、1980年代から使われていたと書く資料があります。2,11 トラップと強く結びついて目立つようになりました。2

リズムの構造の違い。解説記事の整理を箱にしたものです。12,4,9,5,7

0-4年表で見る

アトランタの草の根の世界から生まれ、音が荒くなり、ポップスやダンス音楽にも広がった、という流れです。3,1,13

時代の区切りと主な出来事。3,14,15,16,17,13,11,18 区切りの年は資料の整理に合わせたもので、きっちり切れるものではありません。

生まれた背景メンフィスの種、アトランタの下地、ミックステープ

1-1前史:メンフィス・ラップとTR-808

メンフィスのラップには、あとのトラップにつながる音がすでにありました。19,4

メンフィス・ラップは、1980年代の半ばから後半にテネシー州メンフィスで生まれたヒップホップです。19 わざと録音の質を粗くしたローファイな音で、TR-808と、音数の少ないシンセのメロディを使います。19

DJ Spanish Flyが、TR-808で電子的なドラムの音を持ち込みました。19 生ドラムを好む人とデジタルの音を好む人で、メンフィスのシーンは二つに割れた、とも書かれています。19 カウベル、拍の裏を突くリズム(シンコペーション)、強いサブベース、鋭いデジタルのスネアが、この土地の音の目印になりました。19

ホラー映画の音楽などをサンプリング(既存の録音の一部を取り出して使うこと)して使い、歌詞も暗い内容でした。19 Three 6 Mafiaのビートは、不気味な短調の雰囲気と808の低音という点で、トラップに通じると説明されています。4 3連符のラップは、Three 6 Mafiaのメンバー、故Lord Infamousが90年代に広めた、とも書かれています。11

トラップの最初の波は、Lil Jon、Mannie Fresh、DJ Paulら、南部の先輩プロデューサーの影響を受けたとされます。3

1-2アトランタの下地(1990年代)

1990年代の終わりのアトランタには、あとのトラップに影響した集団がいくつもありました。2,3

Cool Breeze、Ghetto Mafia、Dungeon Familyなどが挙げられます。2 Lil Jon(アトランタ)、Mannie Fresh(ニューオーリンズ)、DJ PaulとJuicy J(メンフィス)は、アトランタの集団と仕事をしました。3 相手は、Dungeon Family、OutKast、Goodie Mob、Ghetto Mafiaなどです。3

1992年に出たUGKの「Cocaine In The Back of the Ride」は、早い時期のレコードの1つとされます。3 1996年には、Master Pが「Mr. Ice Cream Man」を出しました。3 そのあと、薬物の売買を主な題材にするラッパーが、ファンや批評家から「トラップ・ラッパー」と呼ばれ始めました。3 T.I.の2001年の曲「Dope Boyz」の歌詞にも「the trap」が出てきます。3

Wikipediaは、歌詞にトラップが現れ始めたのは1991年、今のトラップの音が生まれたのは1999年、と書いています。3 1990年代後半のアトランタの音は、低音が強く、ファンクの影響があり、物語を語るものだった、という説明もあります。4

1-3草創期の「三位一体」:T.I.、Jeezy、Gucci Mane

T.I.、Young Jeezy、Gucci Maneの3人は「Trap Trinity(トラップの三位一体)」と呼ばれます。2,1 2000年代の半ばに、この3人がトラップの型を作った、と説明されています。1

T.I.は、2001年の1作目『I'm Serious』の売れ行きが悪く、レーベルから契約を切られました。2,14 ミックステープ(自主制作の曲集)で支持を取り戻し、Atlantic Recordsと契約しました。2,14 2作目が、2003年の『Trap Muzik』です。14,1

『Trap Muzik』は、全米アルバムチャート(Billboard 200)の4位に入り、初週に11万枚売れました。14 プロデューサーのDJ Toompが、このアルバムの総指揮(エグゼクティブ・プロデューサー)を務めています。14 DJ ToompはT.I.の最初の4作を手がけた、と書く資料もあります。4

T.I.本人は、2012年12月のインタビューで「自分が来る前は、Lil Jon、OutKast、Goodie Mobがいて、クランクの音楽があった。トラップ音楽というものはなかった」と話しています。3 「その言葉は自分が作った。2作目の『Trap Muzik』だ」とも話しました。3,1 一方で、1人が発明したわけではない、と書く資料もあります。4

Young Jeezyは、2005年にアルバム『Let's Get It: Thug Motivation 101』を出しました。13,4 これを初のメジャー作と書く資料と、2枚目のアルバムと書く資料があります。13,4 プロデュースの中心はShawty Reddで、ダークなトラップのアルバムと紹介されています。13 全米アルバムチャートで2位まで上がり、3倍のプラチナ認定を受けた、とも書かれています。4

Gucci Maneは、プロデューサーのZaytovenと2000年か2001年ごろに出会いました。17 Zaytovenは、両親の家にあったスタジオで一緒に曲を作った、と話しています。17 『Trap House』は2005年5月に出ました。17 Red Bullは、Gucci Maneを「おそらくトラップシーン初のスーパースター」と書いています。13

1-4車のトランクから配るミックステープ文化

大手のレコード会社を通さず、自主制作の曲を車のトランクから配る「ミックステープ」が、広がる力になりました。2,4

T.I.、Jeezy、Gucci Maneの3人は、アトランタの草の根のミックステープの世界で人気が出ました。2 T.I.は、DJ Dramaと一緒にミックステープを出し、それがレーベルの目に留まりました。14

Gucci Maneのミックステープは、フリーマーケットの駐車場でも売られました。17 2007年11月の『No Pad, No Pencil』では、3日で20本のビートにラップをのせた、という話が残っています。17 2007年には、アトランタの警察がDJ Dramaの事務所を捜索し、5万本を超えるミックステープを押収しました。17

Shawty Reddは、ハイハットの刻みでも知られます。2,1 本名はDemetrius Stewartです。1 2000年ごろ、Dramaのアルバム『Causin' Drama』を手がけたときに、速く腰を揺らすような「booty-shake」のハイハットを作った、と説明されています。1 JeezyとGucci Maneは、このShawty Reddとの仕事で知られました。2

1-5Lex Lugerと音が荒くなる波(2010年)

2010年ごろ、プロデューサーのLex Lugerが現れて、トラップのビートは硬く攻撃的になりました。1,3

Lex Lugerは、バージニア州生まれのプロデューサーです。1 Waka Flocka Flameのデビューアルバム『Flockaveli』は、2010年10月5日に出て、Billboard 200の6位に入りました。16 主なプロデューサーはLex Lugerで、808の細かい連打、ハンドクラップ、厚いシンセ、移り変わるサブベースを使った音と説明されています。16

Lex Lugerは、2010年から2011年に200曲以上を作りました。3,1 Rick Rossの「B.M.F.」も、その1つです。3 特徴は、808、鋭いスネア、速いハイハット、シンセの鍵盤、そして金管、弦、木管、鍵盤を使ったオーケストラ風の編成です。3 多くのプロデューサーがこの音を真似し、Lugerは今のトラップの音を広めた人と言われます。3

Lex Lugerは、制作チーム808 Mafiaの共同設立者です。2,3 チームの名前は、トラップに欠かせない低音から付けられました。2 Lugerのビートは、Jay-Z、Snoop Dogg、Kanye Westのアルバムにも入りました。2 EDMのRustieとHudson Mohawkeは、クラブでLugerの曲をかけました。2

人と代表曲資料で繰り返し名前が出る人と作品

2-1ラッパーと並ぶ「共作者」としてのビートメイカー

トラップではビートが曲の半分と言われ、プロデューサーは演奏の手伝いというより、共作者に近い存在です。1

資料に出てくる代表的なプロデューサーの特徴。1,3,4

rhymefluxは、プロデューサーの流れをたどる読み方を勧めています。Shawty Redd、DJ Toomp、Lex Luger、Metro Boominの順です。1 そうすると、言葉が少なく、拍の隙間に収まるものになった理由が分かる、という説明です。1

同じ記事は、最初の波をShawty Redd、DJ Toomp、Zaytovenの仕事としています。1 2010年代の硬い音はLex Luger、その後はMetro Boominと、808 MafiaのSouthsideらが広げた、という整理です。1

2-2Waka Flocka Flame「Hard in da Paint」(2010年)

デビューアルバム『Flockaveli』の2枚目のシングルで、プロデュースはLex Lugerです。16

Lex Lugerの代表曲の1つとして、「B.M.F.」とともに挙げられます。5 密度の高いオーケストラ風の音と、金管のスタブを重ねたビートの例とされます。4

アルバムの評価は、Metacriticの平均が100点中75点でした(9件の評価)。16 Pitchforkのレビューを書いたDavid Drakeは、Waka Flocka Flameの攻撃性を「力のない者が身を守ろうとする反応」と評しました。16 なお、このアルバムのジャンル欄は、トラップではなくcrunkとgangsta rapになっています。16

Waka Flocka Flame『Hard in da Paint』

2-3Migos「Versace」(2013年)

ジョージア州出身の3人組Migosのデビューシングルで、2013年7月に出ました。プロデュースはZaytovenです。15,13

Drakeによるリミックスのあとで広まり、Billboard Hot 100(全米のシングルチャート)で99位まで上がりました。15 3連符のフローを主流の注目に押し上げた曲として知られ、「Versaceフロー」と呼ばれます。最初の曲というわけではありません。15

3連符のラップ自体は、1980年代から使われていました。Migosはそれで、1つのスタイルを築きました。11 Billboardが選ぶ「2010年代を決めた100曲」にも入っています。15 このビートは、2011年にSoulja Boyも別の曲で使っていました。15

Migos『Versace』

2-4Migos「Bad And Boujee」(feat. Lil Uzi Vert, 2016年)

2017年1月21日付のBillboardのHot 100で1位になり、3週間続きました。11

プロデュースはMetro BoominとG Koopです。11 Red Bullは、この曲を「ダークでシュール」と紹介しています。13 Offsetの「Raindrop, drop-top」という言葉がTwitterで遊びのネタになり、ミーム(ネットで広まる決まり文句)として広まりました。11,3

俳優のDonald Gloverは、ゴールデングローブ賞の受賞スピーチでこの曲に感謝しました。11 Stereogumは、アトランタのストリートラップがポップチャートを制覇した、と書いています。11 アルバム『Culture』は2017年1月に出て、のちにプラチナ認定を受けました。11

Migos『Bad And Boujee』

2-5Fetty Wap「Trap Queen」(2014〜2015年)

ニュージャージー州のラッパーFetty Wapのデビューシングルです。プロデュースはTony Faddです。3,13

2015年5月に、全米のBillboard Hot 100で2位まで上がりました。3 続く「My Way」と「679」もトップ10に入りました。3 Red Bullは、2000年代の初めのようなダークな音ではない、と書いています。13 トラップに「みんなで歌うアンセム(大合唱の曲)」という新しい役割を与えた、という見方です。13

Fetty Wap『Trap Queen』

2-6Cardi B「Bodak Yellow」(2017年)

2017年に、Billboard Hot 100で1位になりました。3

VICEは、飾りの少ないトラップのビートの上に、辛辣なラップがのった曲と紹介しています。20 同じ年の8月18日には、Cardi Bがスペイン語でラップする「Latin Trap Remix」が出ました。3

ラッパーの2 Chainzは、2017年6月のインタビューで、トラップ・ラップはもうポップスだ、人々の耳が慣れたのだ、と話しています。3

Cardi B『Bodak Yellow』

2-7Futureとメロディのあるトラップ

Futureはアトランタで育ったラッパーで、トラップの中でメロディとAuto-Tuneを使う先駆者と見なされています。21

Auto-Tune(声の音程を機械で補正するソフト)を、歌うためではなく、ラップの声をざらつかせるために使い始めた、と本人は話しています。21 Pitchforkは2013年に、Futureは「Auto-Tuneがおもしろい芸術の道具になりうると示した」と書きました。21

2014年のアルバム『Honest』には、プラチナ認定の曲「Honest」などが入っています。21 右の動画は、公式のミュージックビデオです。

Future - Honest (Official Music Video)

2015年7月に出た『DS2』は、Billboard 200で初の1位になりました。22,21 Metro Boomin、Southside、Zaytovenなどがプロデュースに参加しています。22 Billboardのレビューは、このアルバムを「ゴシック調で、薬のようで、曇り空に満ちている」と評しました。22 2017年には『Future』と『Hndrxx』が1週違いで1位になりました。21

音の作り方テンポ、808、ハイハット、上物、ミックス

この章の読み方

ここに書くのは、制作の解説記事に書かれた「作り方」です。個々の曲の音を聴いて確かめた内容ではありません。機材名や数字は、その記事が書いている内容です。

3-1テンポとリズム:ハーフタイムのタメ

DAW(作曲ソフト)のテンポは速く、スネアは3拍目に1回。体感はテンポの半分の、ゆったり重いノリになります。5,7,1

基本のパターンは、1拍目にキックと808、2拍目の裏にキックと808、3拍目にスネアかクラップ、4拍目の裏にキックと808(なくてもよい)です。5 2小節目や4小節目で変化をつけます。5

キックは、1拍目を中心に、拍の裏にずらす「シンコペーション」を散らす、と説明する資料もあります。7 4beat studioは、ヒップホップのキックは日本のポップスにあまりない「裏ノリ」が強く、たくさん聴いて真似して身につけるしかない、と書いています。8

短いキックが「アタック」(音の立ち上がり)、長く伸びる808が「ボディ」(音の厚み)を受け持ちます。5 スネアの代わりにクラップ(手拍子の音)もよく使われます。8 スネアとクラップを重ねて厚みを出す方法もあります。5 4拍目の裏にスネアを足すと、簡単に変化がつきます。8,9

rhymefluxは、「140 BPM」という数字を見てその速さで言葉を詰めると、窮屈になると注意しています。1 本当のノリは、その半分の速さで感じるものだからです。1

3-2サブベースの808:音の高さ、スライド、倍音

808は「長く伸びる低音のメロディ」として扱い、曲のキーに合わせた音の高さで、スライドさせながら動かします。23,8,7

作り方の1つは、TR-808のキックの音をサンプラー(録音した音を鳴らす道具)に読み込み、ベースにすることです。24 アーバン系の音楽では定番で、シンセベースとは違う重みが出ます。24

シンセで作る場合、波形はサイン波にします。5 音量の変化は、Attackを0 ms、Decayを1〜3秒にし、Sustainは使いません。5 長くゆっくり消える音になります。5 ノートの頭で高い音から下がる「ピッチエンベロープ」(Decay 50〜100 ms、Amount +12〜+24 semitones)も使います。5

音の高さは、コードの根音(ルート)に合わせるのが一般的です。8,5,24 曲のキーの音や5度の音を使うと、他の音とぶつかりにくく無難です。8 808のサンプルは、チューナーで音の高さを測り、曲のキーに合わせます。23

前の808が次の808と重ならないように設定します。8 Cubaseの例では、モノフォニックモード(一度に1音だけ鳴る設定)にして、GLIDEノブで音の高さがなめらかにつながるようにします。24

808ベースの基本の処理。解説記事の整理を箱にしたものです。23,5,25,24

グライド(ポルタメント)は、音と音のあいだをなめらかにスライドさせる設定です。5 前後のMIDIノートを重ねて入力すると、音の高さがなめらかにつながります。24 一部を1オクターブ上のノートにすると、動きが出ます。24

808は、低い成分が多く、上の倍音が少ない音です。23 軽くゆがませると、小さなスピーカーでも聞こえやすくなります。23,25,5 低音は、25〜30 Hz以下をハイパスフィルター(低い音を切るフィルター)で切り、200 Hz以下はモノ(左右に振らず中央にまとめる)にします。5 中央に集める理由は、低域の位相の問題(音が打ち消し合うこと)を防ぐためです。5,25

3-3ハイハット:8分・16分・32分・3連符と表情付け

打ち込みの基本は8分音符か16分音符で、そこに32分音符や3連符のロールを足します。8,5

ロールは、スネアの前のつなぎ(フィルイン)に使います。5 フィルインの直前で一気に音の密度を上げると、次の展開への期待が高まります。7

すべての音を同じ強さで鳴らすと、単調で平らな印象になります。26 表拍を強く(ベロシティ100〜127)、裏拍を弱く(40〜80)します。5 ベロシティは、音の強さを表す数字です。5

ロールの中でハイハットのピッチを少し変える方法もあります。5,8 変化をつけすぎると乗りにくくなるので、最初は単純なハイハットから始めるのがよい、と書かれています。8 アクセントには、オープンハイハット(音が長く伸びる鳴らし方)を使います。5

3-4上物(うわもの)とメロディ:短調のループと「引き算」

上物(ドラムと808より上で鳴る音)は、暗い短調で、短いループにして、音数を絞ります。5,8,4

スケールは、ナチュラルマイナー(エオリアン)がいちばん基本です。5 フリジアンは、暗くエキゾチックな響きで、ドリルによく出ます。5 キャッチーにしたいときは、5音のペンタトニックが合います。5,8

音色は、ベル、プラック系のシンセ(弦をはじいたように短く減衰する音)、フルート、ピアノが定番とされます。5 パッド(長く伸びる柔らかい音)も使われます。4

フレーズは、2〜4小節のループにします。5,4 1小節に4〜8音ほどにして、隙間を残します。5 コードはなるべく単純なループにすると、ラップをのせやすくなります。8

同じフレーズを繰り返し、最後だけ変える方法も勧められています。5 アルペジオ(和音を1音ずつ順に弾くこと)でビートの印象をつける方法もあります。8

3-5ミックス:キックと808の住み分け

低音域でキックと808がぶつかって濁らないように、キックの音の高さとサイドチェインで整理します。5,25

低音の整理の2つの手法。制作解説記事の整理を箱にしたものです。5,25

キックは、曲のキーに合わせて選びます。25 たとえばFマイナーの曲なら、キックの基音(いちばん低い成分)はFにします。25 中音域に「ノック」(コツンと当たる成分)があると、808の中でもキックが聞こえます。25

サイドチェインは、キックが鳴った瞬間にだけ808の音量を下げる設定です。5,25 低音が打ち消し合うことと、濁りを防ぎます。25 Cubaseの例では、ベースのフレーズにうねりが加わり、独特のノリが生まれる、とも書かれています。24

上物の低い音は、ハイパスフィルターで切って、808とぶつからないようにします。12,8 左右の広がりは、パンニング(左右の位置)と、残響などの空間系エフェクトで作ります。8 低域は中央に集めます。5,25

ミックスの狙いは、クラブ向けの大きな音量、広いステレオ、強調した低域、明るい打撃音と説明されています。4

広がりと今ポップス、ダンス音楽、世界各地、そしてレイジへ

4-0流れを先に見る

広がりの主な出来事を順に並べたもの。3,4,18,27,28,7

4-1ポップスへ:トラップ・ポップ

トラップのビートは、ポップスの作り方の中にも入っていきました。3,2

Beyoncéの2013年のアルバム『Beyoncé』にも、トラップの影響があります。3 Lady Gagaは2013年に、トラップを意識した曲「Jewels 'n Drugs」(T.I.、Too Short、Twista参加)を録音しました。3 Miley Cyrusは2013年に、トラップ系プロデューサーのMike Will Made Itと組みました。3

2013年9月に出たKaty Perryの「Dark Horse」(Juicy J参加)は、2014年1月の終わりまでにHot 100の1位になりました。3 この曲は、トラップがチャートで定着するきっかけとされます。3 Taylor Swiftの『Reputation』(2017年)にも、トラップのビートが入っています。2,3

Rolling StoneのBrittany Spanosは、トラップ・ポップのシングルを作ることが、ヒットの必須条件のようになった、と書きました。3 Ariana Grandeの「7 Rings」(2019年)は、Hot 100で8週間1位でした。3 Lil Nas Xの「Old Town Road」は、トラップとカントリーを合わせた曲で、19週連続1位の記録を作りました。3

Nielsenのデータでは、2018年にヒップホップが史上初めて最も人気の音楽になりました。3 時期はトラップの人気と重なります。3

4-2電子ダンス音楽への波及:EDMトラップ

2012年から2013年ごろ、ダンス音楽のプロデューサーがトラップのドラムを取り込み、「EDMトラップ」が生まれました。4,1

RL Grime、Baauer、Flosstradamus、Yellow Clawなどが、大きな会場向けにこの音を使いました。4 使ったのは、808、スネアのロール、ハーフタイムのドロップ(盛り上がりの場面)です。4 歌のラップは少ないか、まったくないことが多い、と説明されています。4

BaauerのHarlem Shakeは、ネットで広まり、BillboardのHot 100で1位になりました。4,13 形は、長い盛り上げのあとに、大きな808を中心にしたドロップが来るものです。4

Hudson Mohawke、Rustie、Luniceは、Lex Lugerのビートの作りをフェスの演奏に取り入れました。1 2013年には、トラップの影響を受けたEDMが、DJ Snakeによって主流に入りました。3

4-3SoundCloudのラップ

2010年代の初めから、音楽共有サービスのSoundCloudが、地域に縛られないヒップホップの場所になりました。27

エモ・ラップやバブルガム・トラップのように、当時の主流のダークなトラップに合わない音が、ここで育ちました。27 エモ・ラップは、2000年代初めのグランジやエモの空気とトラップの音を合わせたものです。27 2010年代の後半には、SoundCloudから育った曲がチャートの上に来ました。27 例は、Juice WRLDの「Lucid Dreams」、XXXTentacionの「SAD!」、Post Maloneの「Psycho」、Lil Pumpの「Gucci Gang」です。27

Lil Uzi VertやJuice WRLDは、トラップを聴いて育ったSoundCloud世代として挙げられます。1 子音をぼかし、母音を伸ばして、歌に近づけたラップは、批評家から「マンブル・ラップ」と呼ばれました。1 マンブル・ラップはビートの型ではなく、声の型だと説明されています。1

4-4ドリル(Drill):シカゴからロンドン、ニューヨークへ

トラップから枝分かれしたサブジャンルの「ドリル」は、2010年代の初めにシカゴで始まりました。28,3

音の出どころはトラップ、歌詞の出どころはギャングスタ・ラップです。28 2012年に、Chief KeefやプロデューサーのYoung Chopらが注目を集めました。28 Young Chopは、Shawty Redd、Drumma Boy、Zaytovenを先輩として挙げています。28 Lex Lugerの音も、大きな影響を与えたとされます。28

シカゴ・ドリルは、金管風のシンセとベルの旋律、クラッシュシンバル、細かいスネアの連打が特徴です。28 BBCは、トラップを「3拍目のスネアでリズムがかたい」と呼び、ドリルは「機関銃の連射のように跳ねる、シンコペーションしたハイハット」に動いた、と書きました。28

UKドリルは、2013年からロンドンのブリクストンで始まりました。28 テンポが速く、808の「スライド」と、シンコペーションの多いドラムが特徴です。28 UKドリルの影響を受けたブルックリン・ドリルは、2020年代の初めにPop SmokeやFivio Foreignで主流になりました。28 rhymefluxは、ドリルを「トラップの不穏さを強め、弾みを緊張に替えたもの」と説明しています。1

4-5ラテントラップ:レゲトンとの融合とBad Bunny

スペイン語圏では、トラップとレゲトン(プエルトリコ生まれのダンス音楽)を合わせた「ラテントラップ」が広がりました。3,7

始まりについては説が分かれます。Wikipediaは、2015年に始まり、スペイン語圏で最初にトラップを作った国はスペインだったと書いています。3 noteの解説は、プエルトリコの地下シーンで生まれたとしています。7 De La Ghettoは2005〜06年ごろから、Ozunaは2007年の「El Pistolón」を原点の1つに挙げる、とも紹介しています。7

音の特徴は、トラップの808とハイハットのロールの上に、スペイン語のメロディのあるラップや、Auto-Tuneの声を重ねる形です。7 レゲトンのコンガやギロを思わせる打楽器を薄く重ね、イントロやサビにナイロン弦ギターのアルペジオを使うことも多い、とされます。7

Bad Bunnyは、2016年の「Soy Peor」で名を上げました。7 2018年の「Te Boté」のリミックスは、Billboard Hot Latin Songsで1位になりました。7 2020年のアルバム『YHLQMDLG』は、Billboard 200の2位でした。4 2017年7月、The Faderは、プエルトリコのラッパーたちが、トラップのよろめくような低音と震える808を取り込んだと書きました。3

日本では「ラテントラップ」という言葉はまだ一般的ではありません。7 ただ、808とAuto-Tuneの音は、国内のヒップホップやJ-POPのトラップ曲にも入っている、と書かれています。7

4-6韓国のK-POP

トラップは、韓国のK-POPにも入っていきました。3,29,4

Character Mediaの2015年の記事は、BIGBANGの「Bang Bang Bang」を、新しいトラップの音を入れた曲として紹介しています。29 同じ記事には、CLの「MTBD」(2014年)、BTSの「Dope」、4MINUTEの「Crazy」も並んでいます。29 Keith Apeの「It G Ma」のミュージックビデオには、Kohhも出ています。29

2010年代の終わりには、K-POPのグループが808やトラップのドラムをダンス曲に入れるようになりました。4 2020年のBlackpinkの「How You Like That」は、トラップ・ポップの例として挙げられます。3

4-7日本のJ-POPとエモ・ラップ

宇多田ヒカルは、トラップ以降のリズムの区切り方を取り入れた曲を出しました。30

音楽ブロガーのimdkmは、宇多田ヒカルのアルバム『初恋』の曲「Too Proud」(ジェヴォン参加)に、「トラップ以降」のパーカッシブな譜割りがあると分析しました。30 末尾を欠いた3連符と8分音符を行き来する歌い方(ヴァース)が特徴です。30

一方で、同じ記事は、ビートはトラップというよりフットワークに近いとも書いています。30 ベルの「3:3:2」のパターンがその例で、32分や64分音符のハイハットのロールはほとんどありません。30 『初恋』は、2018年のオリコン年間アルバムチャートで5位でした。30

エモ・ラップは日本でも人気があり、ビートはトラップの影響を受けています。8

4-8レイジ(Rage):2020年代の変化

レイジは、トラップから枝分かれしたサブジャンルで、2010年代の後半にアメリカで生まれました。18

初期の音は、短くくり返すステレオ幅の広いシンセのリードと、基本的でエネルギッシュなトラップのリズムでした。18 シンセはフューチャーベースの影響を受けています。18 低音が強く歪んだ808と、叫ぶようなAuto-Tuneの声が特徴とされます。18

先駆者として、Playboi Carti、Lil Uzi Vert、Trippie Reddが挙げられます。18 Cartiのアルバム『Whole Lotta Red』(2020年)は、主にプロデューサーF1lthyが手がけました。18 最初の評価は割れましたが、このジャンルの形を大きく決めた作品になりました。18 Cartiのレーベルに属するKen CarsonやDestroy Lonely、そしてYeatらが広めました。18

「rage」という名前は、2021年にTrippie ReddとPlayboi Cartiが出した「Miss the Rage」から来ています。18 ここでの「rage」は、ライブで客が激しくぶつかり合うモッシュを指します。18 4beat studioも、レイジをトラップのビートに電子音を多く使った派生ジャンルと説明しています。8

出典

  1. What Is Trap Music? The Sound, History, and Artists(RhymeFlux) 音楽解説記事(定義・歴史・作詞の視点)
  2. History of Trap Music(Universal Production Music) 音楽ライブラリ運営元の解説記事
  3. Trap music(英語版ウィキペディア) 百科事典(歴史・特徴・主流化の経緯)
  4. Trap Genre Music: Origins, Sound, Subgenres & Modern Impact(Beats To Rap On) ジャンル解説記事
  5. DTMでトラップビートを作る方法|808ベース・ハイハット・ドラムパターン完全解説(コアミュージックスクール) 解説記事(打ち込みとミックスの整理)
  6. Everything you ever wanted to know about the Roland TR-808 but were afraid to ask(FACT Magazine) 音楽誌の機材ガイド
  7. 【音楽ジャンル】ラテントラップとは?特徴・歴史・おすすめ曲を徹底解説(note) 個人の解説記事(ラテントラップの特徴と制作)
  8. 【2026年最新版】トラップビートの作り方総集編【Hiphop】(4beat studio) DTM解説記事(打ち込みの要点のまとめ)
  9. 10 Tips for Making Your First Trap Beat(Flypaper by Soundfly) 制作解説記事(スネアの置き方など)
  10. 10 tricks every trap producer should know(MusicRadar) 音楽メディアの制作解説記事
  11. The Number Ones: Migos' "Bad And Boujee" (Feat. Lil Uzi Vert)(Stereogum) 音楽メディアの連載批評(Tom Breihan)
  12. How to Make Rap Beats: Free Hip-Hop Beatmaking Guide(Beats To Rap On) ビート作りの総合ガイド記事
  13. トラップの歴史(Red Bull) 音楽メディアの年代別解説(2017年)
  14. Trap Muzik(英語版ウィキペディア) 百科事典(アルバム解説)
  15. Versace (song)(英語版ウィキペディア) 百科事典(楽曲解説・トリプレットフローの普及)
  16. Flockaveli(英語版ウィキペディア) 百科事典(アルバム解説・Lex Lugerの制作)
  17. Hard To Kill: The Oral History Of Gucci Mane(The FADER) 音楽誌のオーラルヒストリー
  18. Rage (music genre)(英語版ウィキペディア) 百科事典(レイジの定義と展開)
  19. Memphis rap(英語版ウィキペディア) 百科事典(808の導入・前史)
  20. The 100 Best Albums of the 2010s(VICE) 音楽メディアのアルバム選(Cardi Bの項)
  21. FUTURE(TheHeat973.com) ラジオ局サイトのアーティスト紹介
  22. DS2 (album)(英語版ウィキペディア) 百科事典(アルバム解説)
  23. How To Make Trap Music: 7 Steps To Hard-Hitting Beats(EDMProd) 制作チュートリアル記事(808の調整など)
  24. Cubase Pro 10 最新音楽制作セミナー 2 Trapベースサウンドとフレーズ作成(Sleepfreaks) 解説記事(808ベースの打ち込み)
  25. How To Make Trap Music: 12 Essential Tips!(Cymatics) 制作チュートリアル記事
  26. 楽曲のリズムに深みを与える、ビート作成に重要な6つのテクニック(Sleepfreaks) リズム解説記事
  27. THE EVOLUTION OF SOUNDCLOUD IN THE 2010S(MUSE Magazine) 音楽メディアの記事(SoundCloudとラップ)
  28. Drill music(英語版ウィキペディア) 百科事典(シカゴ・UK・NYドリルの歴史と特徴)
  29. K-Pop Meets EDM: The Rise of Korean Trap Music(Character Media) メディアの紹介記事(2015年・韓国のトラップ)
  30. リズムから考えるJ-POP史 第9回:宇多田ヒカル『初恋』に見る「J」以後の「POP」(Real Sound) 音楽メディアの批評記事(imdkm)

この資料の作り方:AI(NotebookLM)の深い調べもので集めた記事・論文・公式の情報を人が読み、資料に書いてある事だけを出典番号つきで書きました。音の良し悪しの判断は書いていません。ラジオの音声は同じ資料から AI が作った物です。2026-11-02 作成・Bills House。

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